要点
- 定義:飛騨牛(ひだぎゅう)は、岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種のうち、肉質等級3等級以上・歩留等級A又はBと格付けされたものに与えられるブランド名。
- A5だけではない:基準は肉質等級3等級以上のため、3・4・5等級が飛騨牛に含まれる。
- 沿革:1988年(昭和63年)に飛騨牛銘柄推進協議会が設立。2023年1月にGI(地理的表示)に登録された。
- 味の特徴:網目のようにきめ細かい霜降りと、甘くしつこくない脂の風味。量ではなく脂の質で語られる。
- 血統:多くが兵庫県の但馬牛の種雄牛「安福号」の血統を受け継ぐ。松阪牛・神戸牛との違いは主に産地。
ブランド和牛と聞けば、まず松阪牛や神戸牛の名が浮かび、飛騨牛は「そのほかの銘柄」として一括りにされがちです。そして「飛騨牛=A5の高級肉」というイメージだけが独り歩きしています。けれど、その二つの思い込みはどちらも正確ではありません。飛騨牛とは、岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種のうち、肉質等級3等級以上・歩留等級A又はBと格付けされたものに与えられるブランド名です。A5だけが飛騨牛ではなく、3等級・4等級にも数多くの飛騨牛が存在します。定番の銘柄でありながら誤解されやすい飛騨牛の正体を、選定者の視点で解きほぐします。
飛騨牛の定義——「岐阜産の黒毛和牛」ではない
飛騨牛(ひだぎゅう)は、岐阜県のブランド和牛です。ただし「岐阜で育った牛」がすべて飛騨牛になるわけではありません。飛騨牛銘柄推進協議会が定める飛騨牛の要件は、次の通りです。
- 飼養期間が最も長い場所が岐阜県であること
- 協議会に認定・登録された生産者により肥育された、14ヶ月以上肥育の黒毛和種であること
- 日本食肉格付協会の牛枝肉格付で、肉質等級3等級以上・歩留等級A又はBであること
飛騨牛のブランドは、昭和63年(1988年)の飛騨牛銘柄推進協議会の設立とともに歩み始めました。2023年1月にはGI(地理的表示)にも登録され、産地と品質が国の制度で保護される銘柄となっています。飛騨牛とは、産地・血統・肥育期間・格付という複数の条件をすべて満たしたものだけが名乗れる、定義の明確なブランドです。
飛騨牛の味・特徴——きめ細かな霜降りと、しつこくない脂
飛騨牛の特徴としてまず挙げられるのが、網目のようにきめ細かく入る霜降りです。加えて筋繊維が柔らかく、口に入れたときの繊細な食感と、上質で芳醇なうま味が魅力とされます。
とりわけ語られるのが脂の質です。飛騨牛の脂は、経験上、甘くしつこくない風味と評されることが多く、量ではなく質で語られる銘柄です。霜降りの量(サシ)と、脂そのもののおいしさは、必ずしも同じではありません。A5という等級は主に霜降りの量や色沢を測る物差しであり、脂の口どけや後味の軽さまでを保証するものではないのです。飛騨牛の魅力は、その等級の物差しが測りきれない「脂の質」の側にあると言えます。
飛騨牛と松阪牛・神戸牛の違い——同じ血、異なる産地
飛騨牛・松阪牛・神戸牛は、しばしば横並びで語られます。違いはまず産地にあります。
| 銘柄 | 主な産地 | 特徴 |
|---|---|---|
| 飛騨牛 | 岐阜県 | きめ細かな霜降り、甘くしつこくない脂 |
| 松阪牛 | 三重県 | きめ細かなサシと、とろけるような脂 |
| 神戸牛 | 兵庫県 | 但馬牛のうち厳格な基準を満たしたもの |
興味深いのは、これらが「別物でありながら、遠い親戚」でもあることです。現在飼われている飛騨牛の多くは、兵庫県から導入された但馬牛の種雄牛「安福号(やすふくごう)」の血統を受け継ぐとされます。神戸牛も但馬牛を母体とする銘柄であり、産地の名前は違っても、そのルーツには共通の血が流れています。飛騨牛はその血統を岐阜の風土と肥育で磨き上げ、独自の質を築いてきました。その成果は全国和牛能力共進会でも高く評価され、平成14年の第8回大会で最高位の賞を得たのち、続く第9回でも最優秀枝肉賞を獲得し連覇を果たしています。銘柄の違いは、優劣の順位ではなく、産地ごとの個性の違いとして捉えるのが実態に近いのです。
よくある質問
Q. 飛騨牛の読み方と意味は?
「ひだぎゅう」と読みます。岐阜県内で14ヶ月以上肥育された黒毛和種のうち、肉質等級3等級以上・歩留等級A又はBと格付けされたものに与えられるブランド名です。
Q. 飛騨牛はすべてA5等級ですか?
いいえ。基準は肉質等級3等級以上で、3・4・5等級が飛騨牛に含まれます。A5だけが飛騨牛ではありません。
Q. 飛騨牛と松阪牛・神戸牛の違いは?
産地が異なります。飛騨牛は岐阜県、松阪牛は三重県、神戸牛は兵庫県の銘柄です。いずれも黒毛和種で、多くが但馬牛の血統を受け継いでいます。
Q. 飛騨牛のおいしい食べ方は?
ステーキや焼肉でさっと火を入れて甘い脂をとろけさせるほか、すき焼きやしゃぶしゃぶでも繊細なうま味と柔らかさを楽しめます。
飛騨牛が味わえる名店
同じ飛騨牛でも、等級・部位・血統・熟成、そして火入れによって、味わいは大きく変わります。銘柄を選ぶことは入口にすぎず、その一頭をどう扱うかは店の目利きに委ねられます。JAPAN’S BEST WAGYU セレクション に選ばれた店には、飛騨牛をはじめとする各地の銘柄を、部位ごとの持ち味まで引き出して供する名店が名を連ねています。
まとめ
飛騨牛は、明確な定義に守られたブランドであると同時に、A5という一つのラベルには収まりきらない銘柄です。等級は品質の目安であり、脂の質や部位ごとの個性、そして店の火入れは、その物差しの外側にあります。ブランド名は「どこで育ったか」を示すヒント、答えはその一皿をどう仕立てたかの中にあります。ほかの産地の銘柄と比べたいときは 和牛ブランド一覧 を、そもそも等級とは何かを知りたいときは A5とは何か——和牛の格付けの仕組み も併せてどうぞ。
編集 金子祐生(共同運営・編集長)
本媒体は、掲載する店舗・生産者・企業から金銭を一切受け取っておりません。選考は店舗への事前通告を行わず、飲食にかかる費用は選考委員が負担しています。また、牛肉の販売は行っておりません。
選定基準 選考委員 このアワードについて