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A5和牛は希少なのか|日本の格付データ30年分が示す答え

要点

A5という表示は、いまや和牛の代名詞です。「A5=ごく一部の牛だけが到達する最高等級」という理解も、広く共有されています。ところが日本は、その答えを毎月みずから公表しています。格付を行う公益社団法人日本食肉格付協会が、枝肉の格付結果を品種・性別ごとに公開しているのです。

そして、その数字は通説とは逆を示しています。このページでは、その数値と、背後にある30年分の系列と、計算そのものを置きます。読者が和牛ジャーナルの言葉を信じるのではなく、自分で検算できる状態にするためです。

答え——2026年5月の格付結果

日本食肉格付協会は、格付を通過したすべての枝肉について結果を公表しています。2026年5月の、和牛去勢——高級牛肉の大半がこの区分から出ます——の数字は次のとおりです。

雌牛・雄牛を含む格付和牛全体まで広げると 68.2%(38,123頭中25,999頭)。歩留等級だけを見れば、和牛去勢の 98.4% がAを取得しています。

30年分の推移

ひと月分だけでは例外の可能性が残ります。そこで、同協会が表計算ファイルで公開している全年次を並べます。数値は和牛去勢のA5比率、右列はその背後にある頭数です。

A5比率A5頭数
199617.2%46,826
199716.6%46,800
199816.0%44,111
199914.1%39,022
200012.9%36,055
200111.8%28,532
200213.1%32,983
200313.2%30,144
200414.4%33,524
200515.5%36,001
200615.8%36,622
200716.3%38,853
200818.3%45,687
200918.8%48,706
201017.5%47,366
201117.5%46,943
201219.8%53,829
201321.9%57,048
201426.7%68,461
201531.3%77,778
201634.2%80,489
201737.7%89,838
2018 (訂正版)40.5%98,722
2019 (訂正版)45.9%112,888
202049.5%127,902
2021 (訂正版)53.3%139,540
202259.7%157,580
202363.0%169,234
202467.2%186,645
202571.7%200,843
2026 (5月・月次)76.6%15,237

年次の数値は暦年(1月〜12月)です。2026年の行は執筆時点で最新の月次結果である2026年5月の数値です。「訂正版」とした年は、同協会が当初のファイルに代えて発行した訂正済みファイルを使っています。

この推移が示すもの

上昇は実在し、しかも最近の現象です。1996年から2011年までの期間、比率は12%から19%のあいだで推移していました。そこからほぼ毎年上がり続け、2013年に20%を、2015年に30%を、2021年に50%を超え、2025年には71.7%に達しています。最新の月次では76.6%です。

牛の数が減ったことによる見かけの上昇ではありません。これは真剣に検討すべき反論です。国内の飼養頭数が減り、優れた個体だけが残ったのなら、実態が変わらないまま比率だけが上がることはありえます。しかし実際に起きたのはそれではありません。A5の和牛去勢の頭数自体が、46,826頭から200,843頭へ——絶対数で4倍以上の牛が最高等級に到達しています。

そして最低点は2001年であって、遠い昔ではありません。きれいな物語には合わないので、はっきり書いておきます。比率は2001年(11.8%)より1996年(17.2%)のほうが高いのです。1990年代後半にいったん下がり、それから上昇に転じています。その理由は特定できていないため、推測は書きません。データが支持しているのは2001年以降の形であり、そこは明確です。

もっと広い分母で見る——全格付牛

ここまではすべて和牛を数えています。問いが和牛についてのものだからです。日本で食べる店を選ぶとき、比べる対象は和牛と別の和牛であって、ホルスタインの枝肉ははじめからA5の候補ではありません。それを分母に含めると、目の前にある牛肉にとっての最高等級を、実際より希少に見せることになります。和牛を分母にすれば、答えは和牛去勢で76.6%、雌牛・雄牛を含む格付和牛全体で68.2%です。

とはいえ、乳用種・交雑種を含む「日本で格付されたすべての牛」を分母にして書いている資料も存在します。この問いにとって適切な分母ではないと考えていますが、その判断を読者に丸呑みさせるより、数字を並べるほうが誠実です。同協会は同じファイルの合計行でこれを公表しています。

期間和牛去勢全格付牛
2026年5月(月次)76.6%
15,237 / 19,891
39.6%
26,575 / 67,190
2025年(通年)71.7%
200,843 / 280,161
36.6%
342,771 / 936,561

この広い分母で見ると、比率は 1996年で6.8%2003年の4.9% を底として、以降ほぼ毎年上昇し 2025年で36.6% となります。押さえておきたいのはここです。日本が公表している最も広い分母で30年分を通しても、1〜2%になる年は一度もありません。最も低かった年でおよそ5%であり、それも20年以上前の話です。

言葉づかいの注記をひとつ。これは格付された枝肉の比率であって、日本で生きているすべての牛の比率ではありません。格付は屠畜の段階で行われるため、上の数値はその期間に格付を通過したものを示しています。

なぜ低い数字が流通しているのか

英語圏の小売サイトでは、1〜2%、3%、3〜5%、10%未満といった数字が流通しています。すべてが同時に正しいということはありえず、確認できた範囲では、いずれも出典を示していませんでした。

ここからは推測です。これらの小さな数字は、不正直というより古いのだと考えています。比率が10%台だった時期に書かれた記述が、次の書き手に引用され、また引用され、次第に検算されなくなる。格付の基準そのものは変わっていません。変わったのは、その基準に照らされる牛のほうです。

推測を離れて言えることは、もっと狭く、もっと確かです。確認できた数字のいずれも出典を示しておらず、上記2系列のどの年の格付結果とも一致しません——和牛去勢を分母にしても、全格付牛を分母にしても、1996年まで遡っても、です。個々の販売者を名指しする意図はないため、社名は挙げていません。要点は、この数字が検算可能であるにもかかわらず、ほとんど誰も検算していないということです。

これは「A5が良くない」という話ではありません

A5の牛肉が良くない、という話ではありません。その多くは実際に素晴らしく、この等級に到達すること自体、日本の育種が積み上げてきた達成です。これほど多くの牛肉が到達するようになったのは、まさにそのためです。

意味しているのは、A5が「ふるい」として機能しなくなったということです。4頭に3頭が最高等級を通過するとき、そのラベルが教えてくれるのは下限の位置であって、どの個体が価格に見合うかではありません。2枚のA5を見比べる用途にも使えません。両者を分けるもの——血統、脂の質、肥育期間——を、この等級は測っていないからです。

格付の仕組みそのもの——歩留等級と肉質等級が何をどう測っているのか——は 和牛の等級「A5・A4・A3」の違いを完全解説 で分解しています。等級だけで選ばないための見方は A5ランクの真実|等級だけで選ばない和牛の見方 に、選定でどこを見ているのかは 選定基準 に置いています。

自分で確かめる手順

ここまでの数値は、すべて誰でもダウンロードできるファイルから出しています。

  1. 日本食肉格付協会の格付結果ページを開きます:jmga.or.jp/rating/。1996年以降が表計算ファイルで、1989年〜1995年はPDFで公開されています。
  2. 月次または年次のファイルを開きます。見る行は 和牛去勢、見る列は A-5 です。頭数の列で割るか、シート下方の構成割合の表から比率を読みます。
  3. 注意点がひとつ。2018年・2019年・2021年の年次ファイルは、同協会が発行した訂正版のみが存在します。年度途中のファイルではなく、そちらを使ってください。

このデータの利用について

元になる数値は同協会のものであり、和牛ジャーナルが権利を持つものではありません。同協会は、数値データおよび簡単な表について、出典を明記すれば自由に利用できるとしています。上記の編集物——系列としての組み立てと提示——については、JAPAN’S BEST WAGYU を明記のうえ再利用いただけます。これについて書かれる場合は、両方を併記してください。

2系列とも、1996年〜2025年の30行のファイルとして公開しています。

各行には年、A5比率、背後の頭数に加えて、その数値を取り出した同協会のファイル名が入っています。どの1行でも元の表計算ファイルまで遡れる形です。2026年5月の数値は年次ではなく月次のため、ファイルには含まれていません。出典は下記のとおりです。

よくある質問

Q. A5和牛はどれくらい希少ですか?
希少ではありません。2026年5月、格付された和牛去勢19,891頭のうち15,237頭、76.6%がA5でした。雌牛・雄牛を含む格付和牛全体でも68.2%です。

Q. A5は全体の1〜2%だと聞きましたが本当ですか?
日本の格付データでは、どの分母で計算しても1〜2%にはなりません。乳用種・交雑種を含む最も広い分母でも2025年は36.6%、30年間の最低値は2003年の4.9%です。

Q. A5は昔から多かったのですか?
いいえ。1996年は17.2%、2001年には11.8%まで下がりました。その後ほぼ毎年上昇しています。A5の頭数自体も4倍以上に増えているため、分母が縮んだことによる見かけの上昇ではありません。

Q. では何を見て選べばよいのですか?
等級は下限を保証する手がかりにすぎません。部位、脂の質、火入れ、そして扱う店の目利き——それらは格付が測っていない領域です。選定基準 に、何を見ているかを記載しています。

等級の先を見ている店

A5が4頭に3頭に届く時代に、店の力量はいっそう分かれます。同じ等級の枝肉から、どの部位をどう選び、どう寝かせ、どう焼くか——そこは数字に出ません。JAPAN’S BEST WAGYU セレクション は、選考委員が実際に来店し、費用を自ら負担して選定した和牛・焼肉の名店です。掲載される店舗から金銭は受け取っておりません。

まとめ

A5は、かつて10頭に1〜2頭の等級でした。いまは和牛去勢の4頭に3頭が到達します。この変化は日本の育種の成果であり、同時にラベルの意味が変わったことを示しています。A5は「上位を選び抜く印」ではなく「下限を示す印」になりました。等級は入口の手がかりであり、答えではありません。ブランドと等級はヒント、店主の目利きと火入れが答え——和牛を選ぶ物差しは、そこへ移っています。

出典

文責 鳥山貴之(JAPAN’S BEST WAGYU 主宰・選定委員長/和牛ジャーナル)
編集 金子祐生(共同運営・編集長)
本媒体は、掲載する店舗・生産者・企業から金銭を一切受け取っておりません。選考は店舗への事前通告を行わず、飲食にかかる費用は選考委員が負担しています。また、牛肉の販売は行っておりません。
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