WAGYU KNOWLEDGE / 希少部位

カイノミとは|ヒレの隣で採れる、バラ肉の希少部位

要点

「バラ肉」と聞くと、脂の多いこってりした部位を思い浮かべる方が多いかもしれません。けれど、そのバラの中に、ヒレのようなやわらかさを宿した小さな塊があることは、あまり知られていません。カイノミとは、わき腹のともバラの中で、ヒレに最も近い位置にあるバラ肉。バラでありながら赤身のようにやわらかく、脂の旨味も併せ持つ——分類はバラ、味わいはその両方という、少し欲張りな希少部位です。1頭からわずかしか採れないこの部位の正体を、選定者の視点で解きほぐします。

カイノミはどこの部位か

カイノミは、牛のわき腹にあるともバラ(トモバラ)の一部です。ともバラは赤身と脂が層をなす部位ですが、その中でカイノミが位置するのは、ちょうどヒレに隣り合う内バラ側。バラ肉の中で最もヒレに近い場所にあるため、バラでありながら赤身のきめ細かさとやわらかさを備えています。1頭から採れる量はごくわずかで、希少部位に数えられます。名の由来は、切り出した肉の形が貝の身に似ていること。この整った小さな塊が「カイノミ」と呼ばれてきました。

カイノミとフランクの違い——同じともバラの、どこを取るか

カイノミとよく並べて語られるのがフランクです。どちらもともバラの一部ですが、取る位置と形が違います。

名称ともバラの中の位置特徴
カイノミ内バラ側・ヒレに近い部分赤身がやわらかく、上質な脂を併せ持つ。切り口が貝の身の形
フランク外バラ側の部分赤身の力強い旨味。切り口が笹の葉の形(笹の葉とも呼ばれる)

どちらも希少なバラ肉ですが、カイノミはヒレに近いぶん、やわらかさと上品さが際立つとされます。噛んだときの繊維のほどけ方も、脂の軽さも、フランクとは異なります。似た出自を持ちながら別の個性を宿す——ともバラは、一枚の中にいくつもの表情を隠した部位なのです。

味・食感の特徴——等級では測れない旨さ

和牛の価値は、長らくA5に代表される「等級」で語られてきました。しかし等級は、枝肉のロース芯の断面で判定されるもの。ともバラの一部であるカイノミの美味しさは、そのロース芯の格付けとは別のところにあります。カイノミの持ち味は、等級という物差しの外側にあるのです。

味わいは、赤身のようなきめ細かいやわらかさと、バラならではのコク深い脂の甘みをあわせ持ちます。脂が多いようでいて後味は重すぎず、赤身の旨味がしっかり残る——この「二面性」がカイノミの魅力です。ただし、この美味しさを決めるのは脂の量ではなく、脂の質と赤身とのバランス。サシの多寡だけでは測れない部分に、この部位の本質があります。だからこそカイノミは、A5・サシという単一の物差しだけで和牛を選ぶことの限界を、静かに教えてくれる部位でもあります。

カイノミの失敗しない焼き方・食べ方

カイノミの火入れには、少しコツがあります。せっかくのヒレのようなやわらかさは、焼きすぎるとあっという間に硬くなってしまうからです。厚めにカットし、表面はこんがり香ばしく、中はレア〜ミディアム——赤身のやわらかさと脂の甘みが両立する、この一点を狙います。

  1. 厚みを活かす:薄切りより厚切りの方が、カイノミ本来のやわらかさとジューシーさを感じやすい
  2. シンプルに味わう:塩、わさびなど軽い味付けが好相性です。部位そのものの上品な旨味を消さず、赤身と脂のバランスをそのまま楽しめます

カイノミの値段・希少性

カイノミは1頭からわずかしか採れず、良質な和牛のものは流通量が少ない希少部位です。ヒレのようなやわらかさを持つバラ肉という個性から、焼肉店や精肉店でも上質な赤身部位に近い価格帯で扱われることがあります。相場は銘柄や店により変動するため、目安として捉えてください。希少ゆえに常時置いている店は限られ、出会えたら注文したい一品です。

よくある質問

Q. カイノミはどこの部位ですか?
わき腹のともバラの中で、ヒレに最も近い位置にあるバラ肉です。バラでありながら赤身のやわらかさと脂の旨味を併せ持つ、希少な部位です。

Q. カイノミの名前の由来は?
切り出した肉の形が貝の身に似ていることから、「カイノミ(貝の身)」と呼ばれるようになったとされています。

Q. カイノミとフランクの違いは?
どちらもともバラの一部で、カイノミは内バラ側でヒレに近く、フランクは外バラ側にあります。一般にカイノミの方がやわらかさが際立つとされます。

Q. おすすめの焼き方は?
厚めに切り、表面を香ばしく、中はレア〜ミディアムに。塩やわさびでシンプルに味わうのがおすすめです。

上質なカイノミが味わえる名店

カイノミは、1頭を丸ごと扱える店でこそ出会える部位です。わずかしか採れない希少なバラを仕入れ、正しくカットして出せるかは、その店の目利きと一頭買いの力を映します。JAPAN’S BEST WAGYU セレクション に選ばれた店には、赤身から希少部位まで一頭を扱いきる名店が多く名を連ねています。

まとめ

カイノミは、バラ肉でありながらヒレのやわらかさを宿す、二面性の希少部位です。ラベルは「バラ」、味わいは「バラと赤身の両方」——この部位が教えてくれるのは、和牛はA5やサシという一つの物差しだけでは測りきれないということ。等級は手がかりのひとつであり、答えは部位・火入れ・店主の目利きの中にあります。他の希少部位との比較は 和牛の希少部位ガイド を、部位全体の見取り図は 和牛の部位ガイド も併せてどうぞ。

文責 鳥山貴之(JAPAN’S BEST WAGYU 主宰・選定委員長/和牛ジャーナル)
編集 金子祐生(共同運営・編集長)
本媒体は、掲載する店舗・生産者・企業から金銭を一切受け取っておりません。選考は店舗への事前通告を行わず、飲食にかかる費用は選考委員が負担しています。また、牛肉の販売は行っておりません。
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